問題解決する栄養療法⾷品

リーダーインタビュー

ここで学べること
栄養療法の世界とは、栄養療法ができることは?
今、注目の「栄養療法」について、この世界を牽引する第一人者に伺いました。

おいしく食べて、幸せになる!
患者さん・家族・医療従事者、みんなの
願いを支えるのがNST(栄養サポートチーム)


医師 渡辺克哉さん<第3回配信>


p_main.jpg


1974年生まれ、大阪府出身。医学部卒業後、大学病院や救急救命センターなどに勤務後、在宅医療のクリニックで訪問診療を経験。その後「わたなべクリニック」を設立。現在は大阪府吹田市にて、患者さんに寄り添う在宅医療の第一人者として活躍中。在宅医療における食支援の観点から栄養サポートチーム(NST)を構築し、先進的な活動として注目を浴びる。また、病院や支援事業所との連携により、24時間365日在宅療養を受けられる体制を整えている。医療法人社団 日翔会の理事長。専門は総合内科、血液内科。


 Webサイト 


医療法人社団日翔会


p_profile_01.jpgp_profile_02.jpg




 過去の連載 



Q.在宅NSTのこれからは?


在宅NSTは赤字です、笑。
すぐ近くにNST。
それが当たり前になってほしい。


在宅医療で食支援をするのであれば、一時的なものではなく、2年後、3年後も同じものを提供できないとアカンと思っています。これは学会でも言ったことがあるのですが、僕らの在宅NSTは赤字なんです。今、組織としてうちにできる体力があるのも大きいですが、赤字でもやる理由は、使命感ですよね。
いま、どうしたら黒字展開ができるか、模索しているところです。在宅NSTの主治医は、別に僕でなくてもいいんです。たとえば、在宅医療をお一人で手がけておられる医師がいて、その先生がNSTを抱えようとしたら赤字ですわ。やりたくてもできないのが現状なんです。いま、「主治医の先生の輪に、うちのNSTをポンとはめ込んでもらってイイですよ」という活動をしています。僕もワーキングシェアできるし、NSTもコスト負担を少しばかり抑えられる。他の医師の先生はローコストでNSTを使えるというメリットがある。実際に運用しています。他のドクターにうちのNSTをもっと使ってもらいたいですね。ただ、大阪だったらうちでなんぼでもフォローしますが、他の地域でどうすればいいか、僕もわからないのが現状です。
もっと在宅におけるNSTが当たり前になればいいな、と思います。ケアマネさんが簡単にNSTに依頼できたらイイ。在宅医療を手がける医師がNSTの重要性に対する認識を持ってほしい。もっと気軽に、医師が使いたい時に、うちのようなNSTが傍にあるっていうのが一番良い環境やな、と思います。そして、距離的な近さは重要で、NSTが遠くだったら来づらいこともあるので、すぐ近くにあって、必要な時に当たり前のように頼めるNSTがあちこちにポコポコできたら、いいですね。


p_article_01.png


施設は、ご自宅の何倍も難問が。
患者さんを取り巻く環境で
食支援がうまくいくか、が決まる。


在宅といっても大きく2つに別れるんです。一つは、皆さんが"在宅" という言葉から想像する、患者さんの"ご自宅に赴く場合"。もう一つは、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などの"施設に赴く場合"。ご自宅に赴く場合、そこには、患者さん本人とご家族様がいます。嚥下内視鏡検査などで評価後、食支援の中にあるリスクもきちんと伝えて、ご本人とご家族がリスクを承知し、「それも乗り越えて、みんなで同じ方向を向いてやりましょう」と、進めやすい。
しかし、施設に赴く場合、そこには、施設側の考えが入ってきます。施設側は"安心・安全" を担保しながら介護をされているので、"安心・安全" が担保できないことに対しては、リスク大と捉え、二の足を踏まざるを得ない。これは重々、理解できます。またNST チームが施設に赴いた時に、常に患者さんのご家族が横にいてくれるか、というと、いないんですよね。チームのメンバーが集まっても"同じ方向なのか?" を確認するのが難しいんです。患者さんとご家族が同じベクトルを向いていないこともある。
さらに、施設では食事を作る調理スタッフの人員、オペレーションなどの問題もあります。患者さんに応じて個別対応ができるのかなど、ご自宅の何倍も難関があります。
結局、食支援が上手くいくかどうかは、患者さんを取り巻く環境によるんですよ。本人の希望やご家族の希望が重要なので、僕たちのできるスキルだけでは進んでいかない。食支援って、医療行為というより"生活の一部" だから、範囲がものすごく広いんです。
僕は、患者さんがおいしそうに食べる瞬間を見られる時が大好きです。そして、それを見ている家族さんがにこやかになる瞬間が大好き。「やって良かったな」と思います。うちの在宅NST のスタッフも、それでテンションが上がっていますからね。食べられなかった患者さんがおいしそうに食べているところを見たら、みんなハッピーになれるんです。食べることって幸せにつながりますからね。そのことを共有できる輪が広がればいいな、と心から思います。


p_article_02.png


※内容は2022年6月取材当時のものです。


bnr_products.png