問題解決する栄養療法⾷品

STOP the 体重減少!

ここで学べること
「どうして痩せるのか」「痩せたら何がいけないのか」「痩せないためにはどうすればよいのか」そんなハテナにQ&Aでお答えします。

【1】


高齢者の体の特徴を知ろう


高齢になっても元気に過ごしておられる方がいる反面、病気やけがをきっかけに要介護状態となり、居宅サービスを利用している高齢者も増えています。家で療養しながら暮らす高齢者に注目して、年とともに体にどんな変化が現れるのかを知りましょう。


監修 佐々木 淳(医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長)



Q1.高齢になるにつれて、体にはどんな変化が現れますか?


加齢に伴い、筋肉量、筋力、身体機能が低下し、活動量が減少、食欲低下により食事摂取量が減少することで、必要栄養量が足りず「体重減少」や「痩せ」などのいわゆる「低栄養」の状態になります。


一般に、高齢になると、筋肉量、筋力、身体機能の低下に伴い、活動量が減り、食欲低下により食事摂取量が減少することで必要な栄養量が足りなくなるケースが多く見受けられます。その結果、「体重減少」や「痩せ」などの低栄養の状態になりやすいといえます。低栄養状態では、免疫力も低下し、病気にかかりやすく治りにくくなります。また更なる筋肉量や筋力の低下を招き、転倒、骨折のリスクにもなります。食べられていても「体重減少」という変化が見られたら、全身状態低下の前兆と捉えることができます。




Q2.居宅療養高齢者(在宅高齢者)とは、どのような人のことですか?


何らかのケガや疾患を抱えて暮らしており、通院が困難になるなど、居宅サービスを利用している高齢者です。


持病の悪化、骨折、肺炎などにより入院し、退院後は要介護状態になって自宅で療養しています。要介護度が高く寝たきりの方も含まれます。医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、ケアマネジャー、ヘルパーなどの訪問で、療養に必要な医療・看護・介護・リハビリテーションなどを受け、指導、助言のもとで生活をしています。1-2.png




Q3.在宅高齢者のうち、どのくらいの割合で「痩せ」がみられますか?


6割の方が「痩せぎみ」「痩せ」「痩せすぎ」のいずれかで、「痩せすぎ」が最も多い傾向です。


在宅高齢者を訪問している看護師を対象に行われた「栄養介入・栄養ケア実態調査※1」によると、調査対象者の平均BMI※2Q17参照)は18で、「痩せ」といえます。6割の方が「痩せぎみ」「痩せ」「痩せすぎ」のいずれかで、そのうち「痩せすぎ」が最も多い傾向でした。この「痩せ」による「筋肉の減少」や「低栄養」は全身状態の悪化や身体機能の低下を引き起こし、それに伴う転倒・骨折や誤嚥※3性肺炎(Q15参照)で入退院を繰り返す方も少なくありません。


▶訪問看護利用者の現在の身長・体重から判定したBMI


Q3_訪問看護利用者の現在の身長から判定したBMI2.jpgQ3_訪問看護利用者の現在の身長から判定したBMI.jpg


※1 栄養介入・栄養ケア実態調査概要:●調査主体:ニュートリー株式会社 ●調査協力:株式会社メディバンクス ●調査対象:全国の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師で、利用者の栄養介入状況などを把握している方。または、看護師で以下の対象条件を全て満たす利用者の担当者。〈1〉経口摂取可能〈2〉半年以内の介入〈3〉75 歳以上〈4〉本調査許諾者 ●回収方法:FAX で提出 ●回収期間:2022年8月25日~10月28日 ●回収総数:①事業所281件 ②居宅療養高齢者378名 ※2 BMI=体重kg÷(身長m)2 ※3 誤嚥とは:飲食物や唾液など、本来食道に流れるべきものが誤って気管に入ること。




Q4.在宅高齢者の緊急入院の原因で多いのは何ですか?


肺炎と骨折です。


緊急入院の原因は、肺炎と骨折を合わせて約50%という報告があります。肺炎の中でも飲食物や唾液が気管に入って肺に炎症を起こす「誤嚥性肺炎」は、高齢者に多いと言われています。低栄養による筋力や免疫力の低下が肺炎や転倒・骨折を引き起こす要因になっていると考えられます。


▶在宅高齢者の緊急入院
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Q5.在宅高齢者にとって、入院は身体にどんな影響を与えますか?


生活環境の変化などによる認知機能の低下、治療のための安静・絶食が筋肉減少や低栄養に拍車をかけ、要介護度が悪化したという報告もあります。


高齢になるにつれて環境の変化に適応することが難しくなっていくため、入院という今までの生活とは異なる環境や治療そのものが、身体に影響を及ぼすことが多くなります。在宅高齢者は何らかの疾患を抱えており痩せ傾向にあるため、治療のための絶食や安静が低栄養や筋肉減少に拍車をかけ、身体機能を低下させることも少なくありません。在宅高齢者を対象としたある調査では肺炎や骨折で入院された方は、退院後の要介護度が悪化したという報告もあり、治療の目的は果たされても、入院のたびに要介護度が悪化するリスクが伴います。


▶入院による要介護度の悪化


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※栄養介入・栄養ケア実態調査概要:●調査主体:ニュートリー株式会社 ●調査協力:株式会社メディバンクス ●調査対象:全国の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師で、利用者の栄養介入状況などを把握している方。または、看護師で以下の対象条件を全て満たす利用者の担当者。〈1〉経口摂取可能〈2〉半年以内の介入〈3〉75 歳以上〈4〉本調査許諾者 ●回収方法:FAX で提出 ●回収期間:2022年8月25日~10月28日 ●回収総数:①事業所281件 ②居宅療養高齢者378名




※居宅サービス:自宅で生活する人を対象とした介護保険の介護サービス全般のこと。居宅サービスの種類は、「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」「その他のサービス」の4種類。訪問サービスには、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導などがあります。※このQ&Aページでは、居宅療養高齢者を「在宅高齢者」と表記しています。




【1】高齢者の体の特徴を知ろう
【2】高齢者の痩せの原因を知ろう
【3】高齢者の痩せのリスクを知ろう
【4】痩せ(低栄養)の判断基準を知ろう
【5】 痩せないための方法を知ろう
【6】痩せないための食事をしよう