問題解決する栄養療法⾷品

STOP the 体重減少!

ここで学べること
「どうして痩せるのか」「痩せたら何がいけないのか」「痩せないためにはどうすればよいのか」そんなハテナにQ&Aでお答えします。

【3】


高齢者の痩せのリスクを知ろう


痩せている高齢者は、太っている高齢者に比べて、さまざまなリスクを抱えているというデータがあるのをご存知でしょうか。痩せていく状態を放っておくと、更なる「痩せ」を引き起こす悪循環にもつながります。どんなリスクがあるのでしょうか?


監修 佐々木 淳(医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長)



Q10.在宅高齢者が低栄養で痩せてしまうと、どうなるのですか?


筋肉量が減少し全身の筋力や運動機能の低下が生じ、「サルコペニア」や「フレイル」にも陥りやすくなります。


基礎疾患をお持ちの在宅高齢者の中でも、要介護度が高い寝たきりの方では痩せてしまうと、骨の突出が目立つようになり、褥瘡(床ずれ)が生じやすくなります。床ずれは皮膚疾患の一つ。キズなので、キズを治すために必要なたんぱく質、亜鉛、ビタミンなどが不足すると、なかなか治らなかったり悪化したりすることも少なくありません。
また低栄養は免疫力を高める栄養素の不足にもつながるため、風邪や肺炎をはじめとする感染症にもかかりやすくなります。これらが重なると、要介護度が上がったり入退院を繰り返したりして、日常生活の質の低下が危惧されます。「サルコペニア」や「フレイル」にも陥りやすくなります。


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Q11.「サルコペニア」「フレイル」について詳しく教えてください。


老化や慢性疾患によって筋肉量の減少を主症状とし、それに伴う筋力や筋肉の機能が低下した状態を「サルコペニア」といいます。「フレイル」は、サルコペニアが引き金の一つとなり、運動機能や認知機能を含む全身の機能が低下した虚弱な状態、要介護の手前の状態をいいます。


体の中では筋肉の合成と分解が行われています。食事によって得られたたんぱく質は合成により筋肉に蓄えられ、エネルギーが足りなくなるとその蓄えを分解して補います。高齢になるにつれ、この合成と分解のバランスが崩れ、合成されにくい状態になるために筋肉量が減少し痩せていくと考えられています。これが「サルコペニア」です。「筋肉減弱症」という疾患として位置づけられています。


「フレイル」は加齢により心身が老い衰え、社会とのつながりが希薄になることから始まると言われています。QOL(生活の質)の低下のみならず、健康的な暮らしに対する積極性も失われ、心身の機能の低下、要介護になる一歩手前といった状態です。


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日本版フレイル基準により、体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度、身体活動の評価基準で3項目以上に該当するとフレイル、1~2項目に該当するとプレフレイル(フレイル予備軍)と評価されます。


厚生労働省では早期にフレイルを発見して支援を行うため、「介護予防のための生活機能チェック」という25のチェック項目を定めています。気になる症状が見られたら、かかりつけの医師に相談しましょう。


参考:https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/shindan.html




Q12.元気な高齢者でも「痩せ」はリスクになるのですか?


平常時は問題なく過ごせていても体に異変が起こったときに、痩せていることがリスクになります。


見た目が元気であっても、痩せて栄養が不足していると、蓄えが少ない状態です。アメリカの研究では痩せて低栄養の高齢者は栄養状態が良好な高齢者に比べ、3年後の生存率が1/4と報告されています。健康寿命を延ばすためには、痩せないことが大切です。




Q13.入院によって身体・認知機能が低下することはありますか?


身体・認知機能が低下することがあります。


入院は一定期間、安静となり活動が制限されます。また治療にともなう絶食などで、十分な栄養を摂取できないことがあります。この安静と低栄養は、全身の筋肉量を低下させ体力や身体機能の悪化につながりやすく、高齢者では「10日間の入院で、7年老化したと同じ筋肉の喪失がある」といわれています。さらに入院という生活環境の変化に対応できず、せん妄や認知症状の悪化もみられることがあります。これらを専門用語で「入院関連機能障害」と呼びます。


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Q14.若いころ肥満を指摘され、健康のためには太らないように指導されてきましたが、年をとったら太った方が良いのですか?


高齢者は、過度な糖質・脂質制限で肥満予防をするよりも、痩せないようにすることが大切です。


厚生労働省の呼びかけが変化していることをご存知ですか? これまでは予防医学的視点から、働き盛りの成人に対する肥満予防に注力してきましたが、高齢化が進行している現在、健康寿命延伸のため「痩せ」によって生じる問題を未然に防ぐ痩せ対策が提唱されています。高齢者が直面しているリスクは「サルコペニア」や「フレイル」です。これらは「痩せ」に起因します。年を重ねても健康でいるために、しっかり食事を摂りましょう。


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Q15.高齢者の肺炎は「痩せ」と関係がありますか?


関係があります。痩せは飲み込みに関係する筋肉の減少とそれに伴う機能や免疫力の低下も進行させるため、高齢者に多い「誤嚥性肺炎」のリスクを高めます。


全身の筋肉が減少すると、噛んだり飲み込んだりするための口やのどの筋肉も減少します。また誤って飲食物が気道に入った場合、通常は咳をすることで異物を排除していますが、全身の筋肉が減少すると、咳をして飲食物を排除する力が弱くなります。そのため、気道に異物や唾液が入り込みやすくなります。これを「誤嚥」といいます。さらに低栄養で免疫力の低下も生じているため、異物に付着した細菌が原因で「誤嚥性肺炎」を発症することが多いのです。


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Q16.高齢者の骨折は「痩せ」と関係がありますか?


関係があります。在宅高齢者の骨折の原因を調べたところ、低栄養が多く、それに起因する筋脆弱性(筋肉の弱さ)、筋量減少が示されました。


低栄養で痩せた体では、筋肉が少なく運動機能が低下しています。転んだ時のクッションとなる皮下脂肪も少なく、カルシウムも不足した骨粗しょう症傾向にあり、転倒の際に骨折してしまうケースが少なくありません。転倒や骨折を気にして運動を控えていると、食欲がわかず食べる量も減少するため体に必要なエネルギーが不足します。すると筋肉が分解され不足分を補おうとするので筋肉量が減っていき、さらに運動機能が低下し、転倒し骨折するという悪循環に陥ります。


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【1】高齢者の体の特徴を知ろう
【2】高齢者の痩せの原因を知ろう
【3】高齢者の痩せのリスクを知ろう
【4】痩せ(低栄養)の判断基準を知ろう
【5】 痩せないための方法を知ろう
【6】痩せないための食事をしよう