STOP the 体重減少!
【6】
痩せないための食事をしよう
痩せないためには栄養を摂ることが大切なのは百も承知。でも、食欲がわかなかったり食べられなかったり、栄養摂取を妨げる要因も多々あります。そんな時に活用できるヒントや具体策をお教えします。
監修 佐々木 淳(医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長)
Q33.高齢者の「痩せ」を止めるにはどうしたらいいですか。
不足しているエネルギー量を把握し、栄養価が高い食品や、たんぱく質を多く含む食品をとり入れましょう。
高齢者は若者に比べ、筋肉を増やす(筋たんぱくを合成する)ためには、より多くのたんぱく質が必要です。筋たんぱく合成増加率100%に到達するには、若者の場合、8gのたんぱく質で筋たんぱく合成が起こりますが、高齢者の場合、20gが必要という研究結果があります。今の筋肉を保つために必要なたんぱく質も、体重1㎏あたりで比較すると高齢者は若い人の2倍も多く摂らなければなりません。
せっかく摂り入れたたんぱく質が分解されないためにも、炭水化物、脂質、たんぱく質のバランスを考え、少食の高齢者でも無理なく補給のできる栄養補助食品(Q35参照)も取り入れると良いでしょう。
Q34.痩せないためにはどんな食品を食べたらよいですか。
栄養価が高くたんぱく質が多く含まれたものがおすすめです。手軽に食べられる市販品や外食のメニューなども取り入れて楽しみましょう。
最近のお弁当や総菜はさまざまな食材が含まれており、種類も豊富で選ぶ楽しさがあります。食品ごとにエネルギー表示されていることも、摂取エネルギーを意識する上では参考になります。
若者受けするカロリー高めのファストフードやお弁当、ダイエッターに敵視されるバターたっぷりの洋食やスイーツなどは、「痩せ」と闘う高齢者にとっては強い味方といえます。
▶エネルギーが多く摂取できる食品例
- ハンバーガー、牛丼、ピザ、フライドチキン、ファストフードやコンビニのおかずが多いお弁当など。
- 市販のお惣菜や外食でのメニューには、エネルギーやたんぱく質を同時に摂ることができるものが多くあります。種類も豊富なのでいろいろなものを食べるようにしましょう。
- オリーブオイルは調理で使うだけでなく、飲み物に入れたり食品にかけたりすることでエネルギーアップができます。
▶たんぱく質を多く含む食品例
- 肉、魚、卵、チーズ、大豆(豆製品)、乳製品など。
- 栄養価が高い食品やたんぱく質を多く含む食品を組み合わせ、同じ食品に偏らないことにも注意しながら、体重を維持していきましょう。
Q35.栄養補助食品とはどんなものですか。
食事だけでは1日に必要な栄養量が充たせない場合や不足しやすい栄養素などを補う場合に使われる食品です。
不足しがちなたんぱく質、ビタミン、ミネラル、微量元素などが配合され、少量でも栄養価が高く設定されているので、少食の高齢者の低栄養を改善するために病院、高齢者施設、在宅などで広く利用されています。ドリンク、ゼリーなど食形態にも配慮されており、嗜好に合わせた味のバリエーションも種類が豊富です。最近では、消費者庁から特別用途食品の表示許可を得て、飲み込みが難しい方向けの「えん下困難者用食品」や「褥瘡を有する方の食事療法に使用できる食品」にも注目度が高まっています。選択肢の一つとして食事や間食に取り入れることで手軽な栄養補給が可能です。
Q36.提供される食形態と、高齢者が食べられない状況や低栄養に関係がありますか?
関係があります。高齢者が食べられない理由には、本人の食べる機能に対して、不適切な食形態が提供されていることも挙げられます。
年とともに体の機能が徐々に衰えてくると、噛んだり飲み込んだりする機能にも低下がみられます。通常の食事では噛んだり飲み込んだりしづらい、むせてしまう、食べるのに時間がかかり疲れてしまう、などから食べなくなるケースも多く見られます。逆に、食べる機能に問題がないにもかかわらず、刻み食ややわらかすぎる食事が提供され、これが食欲不振につながって食べなくなり、低栄養に陥ることもあるため、注意が必要です。
▶栄養状態と食形態〈食形態別MNA判定〉
Q37.食欲がわかず食べる量が少ないとき、どんな工夫をしたらよいですか。
食べるものや食べ方、食事環境に変化をもたせるなどの工夫をしてみるのもよいでしょう。
少食の場合、食べ始めはおかずを優先し、満腹になる前にたんぱく質がしっかりとれるようにしたいものです。しかし、「バランスよくしっかり食べなくては」と食事が負担や苦痛を招かないように気をつけましょう。
▶量が多くて食べられないときは...
- 好きな食べ物を好きなだけ、まずは食べる。
- 少量ずつ数回に分けて食べる(1回で食べ切れる量に盛り付けておくと、食べたくなったときにすぐ食べられます)。
- 間食で補う(ヨーグルト、チーズ、豆乳などを常備しておくと便利です)。
- 小量で栄養価が高い栄養補助食品を利用する。
▶食欲がわかないときは...
- 家で食べるときも、庭に出てピクニック気分を。
- たまには、みんなで外食を。
食事は「栄養を摂る」ことだけが目的ではありません。誰かとのつながりを実感する大切な場を楽しむ気持ちを忘れずに。
Q38.飲み込むときのむせが目立ち、誤嚥が心配です。思うように飲み込めない時の栄養補給はどうしたらよいですか。
消費者庁が表示を許可する「えん下困難者用食品」を活用してみましょう。
飲み込む機能に問題があって思うように食べられない場合、飲み込むことが難しい人に配慮したえん下困難者用のゼリーが広く利用されています。消費者庁からえん下困難者用食品の表示許可を取得している「ブイ・クレスCP10ゼリー ミックスフルーツ」は、少食の高齢者でも食べきれる80gのコンパクトサイズで、エネルギー110kcal、たんぱく質12g、ビタミン・ミネラルなども摂ることができます。とろみが苦手な方でも、ゼリータイプならのど越しよく食べることができます。
Q39.糖尿病なので糖質制限を守ってきましたが、年とともに痩せてきました。どうすればいいでしょうか?
医療者に相談の上、糖質制限を緩めて食べられる食品や量を増やしてしっかり食べましょう。
高齢者は、治療のための食事制限を厳格に守ることによる低栄養にも気をつける必要があります。日本糖尿病学会でも体の機能に衰えが目立ち始めた高齢者については「十分なたんぱく質と比較的多めのエネルギー摂取が望ましい」とガイドラインに記しています。糖尿病のリスク回避のためのカロリー制限より、「痩せ」によるリスクの方が大きいということです。良質なたんぱく質と栄養価の高い食事で、「痩せ」を止めましょう。これは塩分制限、たんぱく質制限にも言えることで、高齢者は明らかに「痩せ」によるリスクの方が大きいのです。
Q40.痩せも顕著で、寝たきりです。褥瘡(床ずれ)が良くならないのですが、食事療法に使用できる食品があるのですか?
あります。褥瘡(床ずれ)を有する方の食事療法に使用できる、との表示を消費者庁が許可する特別用途食品を活用しましょう。
褥瘡(床ずれ)の治療を促進するには、同じ場所に圧力がかかることを避ける「体圧分散」、皮膚を清潔に保つ「スキンケア」に加え、「栄養補給」が欠かせません。そこでおすすめしたいのが、ドリンクタイプの「ブイ・クレスCP10(シーピーテン)」です。特別用途食品 個別評価型病者用食品として「褥瘡(床ずれ)を有する方の食事療法として使用できる食品です。」との表示許可を取得しています。1本125mLのコンパクトサイズでありながら、エネルギー、たんぱく質はもとより、褥瘡(床ずれ)治癒の関与成分としてコラーゲンペプチド(10g)、亜鉛、ビタミンCが配合されています。病院、施設、在宅などで広く利用されています。
【1】高齢者の体の特徴を知ろう
【2】高齢者の痩せの原因を知ろう
【3】高齢者の痩せのリスクを知ろう
【4】痩せ(低栄養)の判断基準を知ろう
【5】 痩せないための方法を知ろう
【6】痩せないための食事をしよう